香典のこと

大阪でも香典辞退の傾向に

故人の遺志によりご香典の儀は、固くご辞退申し上げます。
最近では、お葬式の式場へ行くと、受付のところで『香典辞退』の案内板を見かけることが当たり前になっています。

私どものお客様でも、最近は10人中9人の方が「お香典は辞退でお願いします」とおっしゃいます。

理由は、「返しが大変」「香典袋に宛名が書いておらず調べるのに大変」など、過去に大変な経験をされた方が圧倒的に多いようです。

ギフト屋さんには申し訳ないですが、ご当家のお気持ちもよくわかります。
お葬式のあとは、手続きごとや満中陰の準備などで大変なのに、住所録を作成したり品物を選んだりと、手間と気遣いが発生するのですから。

辞退することについては、私がどうこう言うつもりはありません。
ですが、なかには辞退について思い違いをされている場合があります。

香典の歴史について

昔は「香典」とは書かずに「香奠」と書き、亡くなった方に「香を供える」という意味でした。
お香を買う代金として「香典」・「香資」(こうし)・「香料」と書くようになったのです。


室町時代後期には、武士が金銭で香奠を出した記録がありますが、農村部において香奠とは、長い間、米などの食料をもちよることでした。

その後、都市部では明治期に金銭の香奠が一般的になりましたが、地方で金銭香奠に移行しはじめるのは大正期あるいは昭和初期からのことです。


葬儀を出すと近隣の方々にいろいろと協力してもらう代わりに、食事などの振る舞いをしなければなりません。これは多額な出費となりました。
そうなると、喪家やその親族の負担は大きく、貧しい家では「葬儀をだせない」という事態もでてしまいます。

香典はそうした状況に対応する相互扶助としての意味合いが強いものだったのです。

香典辞退について改めて考える

現代ではそれなりに社会全体が豊かになり、相互扶助としての香典の意味がなくなりつつあり、それに加えて「香典返し」というわずらわしさから解放されたいと思う人々が増えたのでしょう。

だから、香典辞退が増えたように思うのです。


しかし、問題なのは香典を辞退しても樒や供花なら受けるという考え方です。
このお考えの方は、意外と多いのですが、私どもは少しおかしいと思います。
辞退するならすべてを辞退するべきですし、お受けするならすべてを受けるべきではないでしょうか。

 

なぜ、こんなことを言うのかと申しますと、香典さえ辞退すれば何も返しが要らないと考えておられる方がほとんどだからです。たしかに香典を辞退されれば香典返しは不要です。
しかし、供花にしても樒にしても、盛かごにしても、相手様はお金を出していることには変わりありません。

つまり、お返しをする必要があるわけです。


香典は満中陰にまとめてお返しします。供花はどうでしょう。
いただいた方のご不幸の時にお返しを・・・と、考えますといつになるかわかりません。
いつまでも記録を残しておいて、『こちらに供花をいただいているんじゃ?』と、そのつど調べなくてはなりません。
その方が面倒ですし、手間がかかります。

だからこそ、辞退するならすべてを辞退する方がいいのです。式場を少しでも賑やかにというお気持ちもわからなくもないですが、供花を受けてしまえば香典を辞退した意味がなくなるわけです。

 

企業の場合は違う意味合いもありますので、あくまでも個人葬についてとお考え下さい。


これらを踏まえ、もしもの時にどちらがあなた様にとってよいのかをお考えいただければと思います。